「きょうだいのお迎えをお願いするのはヤングケアラー?」
「家事を手伝わせるのはネグレクト?」
そんな不安を抱える保護者も多いのではないでしょうか。
ヤングケアラーという言葉が広まるにつれ、「うちの子は大丈夫?」「どこからが問題なの?」と心配になる方も増えています。
この記事では、ヤングケアラーとお手伝いの違い、そしてネグレクトとの関係性を、具体的な判断基準とともに解説します。
ヤングケアラーとお手伝いの3つの違い

まず、「お手伝い」と「ヤングケアラー」の違いについて簡単に解説します。
高知大学医学部の福留惠子特任助教は、3つの観点から違いを説明しています。
①状況の違い:子どもらしい生活ができるか
自分の年齢に合う作業や、年齢よりもちょっと上の作業をすることで、子どもは褒められ、達成感を味わえます。学校や友達との時間、自分の趣味や勉強の時間は確保されています。
ケアに追われて部活動に参加できない、友人と遊ぶ時間がない、宿題をする時間が取れないなど、子どもらしい時間が奪われています。
②頻度・時間の違い:負担の大きさ
たとえば、週末に一緒に料理をする、夕食後に食器を洗う、自分の部屋を掃除するといった内容です。
前述の調査では、平均4時間のケアを行っており、朝の準備から夜の寝かしつけまで、休む間もなく家族の世話をしているケースも少なくありません。
③責任の度合いの違い:「断れる」かどうかが鍵
お手伝いは、子どもが「今日は疲れたからやりたくない」「友達と遊びたいから無理」と言えば、親が代わりにできます。
しかし、ヤングケアラーは違います。
「自分がケアをしないと、家族の生命や生活に直結する」という状況に置かれており、年齢や成熟度に合わない重過ぎる責任を負っています。
広島県の啓発資料でも、「子供が『今日はできない』と言ってやめられるなら手伝い」という視点が示されています。
エラコ「断れるかどうか」という視点は、とてもわかりやすいと思いました。



子どもが自分の意思で選択できる環境があるかが、健全な成長には欠かせないのだと感じます。
ヤングケアラーとは?定義と実態も知っておこう


ヤングケアラーの定義
ヤングケアラーとは、
家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている18歳未満の子どものことを指します。
日本ケアラー連盟によるこの定義は、国や自治体の施策でも広く採用されています。
重要なのは、「年齢や成長の度合いに見合わない重い責任や負担」を負っているという点です。
ヤングケアラーが担う具体的な役割
ヤングケアラーは、次のような役割を日常的に担っています。
ココハレ「ヤングケアラーを知っていますか?」
- 家事全般:障がいや病気のある家族に代わり、買い物、料理、掃除、洗濯など
- きょうだいの世話:幼いきょうだいの食事や入浴、送り迎えなど
- 見守り・声かけ:障がいや病気のある家族、目を離せない家族の見守りや声かけ
- 通訳:日本語が第一言語ではない家族や障がいのある家族のために通訳
- 家計の支え:家族を助けるために働いている
- 依存症への対応:アルコール、薬物、ギャンブル問題を抱える家族への対応
- 看護・介護:服薬管理、たんの吸引、体位交換、排泄・入浴の介助、移動の手伝いなど
これらは本来、大人が担うべき内容であり、子どもの心身に大きな負担をかけるものです。
日本の実態:中学生の17人に1人がヤングケアラー
厚生労働省が2020年度(令和2年度)に実施した「ヤングケアラーの実態に関する調査研究」から、以下のことがわかっています。
【ヤングケアラーの割合】
- 中学2年生:5.7%(約17人に1人)
- 全日制高校2年生:4.1%(約24人に1人)
【ケアを始めた時期】
- 中学生:平均9.9歳
- 高校生:平均12.2歳
【1日あたりのケア時間】
- 中学2年生:平均4.0時間
- 全日制高校2年生:平均3.8時間
【ケアをする相手】
- 最も多いのは「きょうだい」:中学生61.8%、高校生44.3%
- 理由:「きょうだいが幼いから」が約7割



この統計を見たとき、「17人に1人」という数字の多さに驚きました。



クラスに2〜3人はいる計算ですね。



身近な問題なのに、気づかれていないケースが多いのではないかと思います。
ヤングケアラーとネグレクトの関係とは


「ヤングケアラー」という言葉が広まるにつれ、「これは虐待では?」「ネグレクトと同じでは?」という疑問を持つ方もいます。
ここでは、ヤングケアラーとネグレクトの関係性を整理します。
ネグレクトの定義
ネグレクト(育児放棄・養育放棄)とは、
具体的には、以下のような状態です。
- 食事を与えない、栄養が不十分
- 清潔な衣服を用意しない、入浴させない
- 学校に行かせない、無断欠席を放置する
- 病気やケガをしても医療機関に連れて行かない
- 子どもを長時間放置する、家に閉じ込める
ネグレクトは、児童虐待の一種であり、子どもの権利を著しく侵害する行為です。
ヤングケアラー≠ネグレクトではない
神戸市のこども・若者ケアラー相談・支援窓口の上田智也担当課長は、次のように語っています。
「ヤングケアラーを、虐待やネグレクトを受けている子どもとしてイメージしている人も多いでしょう。しかし、実態はそうではありません。虐待やネグレクトという枠には到底入らないケースが、むしろたくさんあると感じています」
リディラバジャーナル
例えば、経済的な理由で親が朝から夜遅くまで働かざるを得ない場合、子どもが祖父母やきょうだいの面倒を見ることになります。
親が病気や障がいを抱えており、物理的にケアができない場合もあります。
こうしたケースで、「家族のために精一杯働いている親」や「病気と闘いながら子育てをしている親」を責めることはできません。
ただし一部のケースでネグレクトに該当する場合も
印西市の啓発ページでは、次のように注意喚起しています。
「ヤングケアラーと呼ばれる子どもが存在することを多くの方々に知っていただき、また、こうした子どもの中には、子どもの健やかな成長や子どもの権利が阻害される恐れがあり、ネグレクト(養育放棄)や心理的虐待に至っている場合があることを認識していただければと思います」
印西市「ヤングケアラーはこんな子どもたち」
見極めのポイントは、以下の通りです。
| 項目 | お手伝い・適切なケア | ネグレクトの疑い |
|---|---|---|
| 食事 | 子ども自身も十分な食事を取れている | 子どもが自分の食事を用意できず、栄養不足 |
| 教育 | 学校に通え、学習時間も確保されている | 学校を休みがち、宿題ができない環境 |
| 医療 | 子どもの体調不良時に親が対応する | 子どもが病気でも放置される |
| 保護者の関与 | 親が状況を把握し、サポートしている | 親が子どもに丸投げし、関心を示さない |
| 子どもの意思 | 子どもが「やめたい」と言える | 子どもが「やめたい」と言えない、訴えても無視される |
ネグレクトの場合、保護者が意図的に子どもを放置し、基本的な養育を怠っている点が決定的に異なります。



ヤングケアラーとネグレクトは別の問題ですが、一部で重なるケースもあるという点が重要だと思いました。



家庭の状況は一つひとつ違うので、一律に判断せず、丁寧に見ていく必要がありますね。
そもそも、ヤングケアラーは「いいこと?わるいこと?」


ただし「子どもの権利が守られていない状態」は問題
①ヤングケアラー自体は「良い・悪い」で判断すべきものではない
理由:
- 家族をケアすること自体は尊い行為であり、子どもが家族を思いやる気持ちは否定されるべきではない
- 家族の在り方は多様であり、文化的・経済的・社会的背景によって家族のケアの形は異なる
「ヤングケアラーはなくさなければならないものではありません」「ケアを担っていることそのものはかわいそうなことではありません」
ココハレ「ヤングケアラーを知っていますか?」
②問題なのは「子どもの権利が侵害されている状態」
何が問題か:
- 年齢や成長段階に見合わない重い責任や負担を負っている
- 子どもが子どもらしく生きる権利(教育・友人関係・自分の時間・健康・将来の選択)が奪われている
- 「断れない」「他に選択肢がない」状況に置かれている
③「ヤングケアラー」というラベル自体の問題
保護者が傷つくケース:
- リディラバジャーナルの記事(和田氏の証言):「自分の子どものことを『ヤングケアラー』と言われるのが辛い」「自分が責められている気持ちになる」
- 多くの保護者は精一杯努力しているのに、「ヤングケアラー」という言葉が「虐待・ネグレクト」と結びつけられ、責められていると感じる
④位置づけ
| 観点 | 位置づけ |
|---|---|
| ケア自体 | 良いことでも悪いことでもない(家族を思いやる行為) |
| 過度な負担 | 問題(子どもの権利侵害) |
| ラベリング | 支援のための概念(責めるためのものではない) |
| 社会の役割 | 子どもが「ケアをしながらも子どもらしく生きる権利を回復」できるよう支援する |
【具体例で判断】これはお手伝い?ヤングケアラー?


実際の場面で、「これはお手伝いなのか、ヤングケアラーなのか」を判断するのは難しいものです。
そこでここでは、専門家が挙げている「見分けるポイント」や実際の調査データをもとに、よくあるシーンを例に挙げながら、判断の基準を整理していきますね。
ケース①きょうだいのお迎え
【シーン】
小学5年生の子どもが、毎日、保育園に通う弟のお迎えに行っている。
【お手伝いの場合】
- 親が仕事で少し遅くなる日だけ、週に1〜2回お迎えを頼む
- 子ども自身が「やってもいいよ」と言っている
- 親が「ありがとう、助かったよ」と感謝し、負担を気にかけている
- 子どもが友達と遊ぶ時間や習い事の時間は確保されている
【ヤングケアラーの疑いがある場合】
- 毎日、必ず子どもがお迎えに行かなければならない
- 子どもが「疲れた」「行きたくない」と言っても、他に選択肢がない
- お迎え後、弟の夕食や入浴、寝かしつけまで子どもが担っている
- 部活動や友達との約束を断らざるを得ない
ケース②夕食の準備
【シーン】
中学生の子どもが、毎日夕食を作っている。
【お手伝いの場合】
- 親が料理を教えながら一緒に作っている
- 週末や時間のある日だけ、子どもが担当している
- 子ども自身が料理に興味を持ち、楽しんでいる
- 親が「今日は疲れているから代わるね」と言える関係
【ヤングケアラーの疑いがある場合】
- 親が病気や仕事で不在のため、子どもが毎日一人で作らざるを得ない
- 献立の考案、買い物、調理、片付けまで全て子どもが担っている
- 宿題や勉強の時間が削られている
- 子どもが「やりたくない」と言える雰囲気がない
ケース③祖父母の介護サポート
【シーン】
高校生の子どもが、同居する祖父母の介護を手伝っている。
【お手伝いの場合】
- 親が主にケアを担っており、子どもは「少し手伝う」程度
- 祖父母との会話や、簡単な見守りなど、年齢に合った範囲
- 子どもの学校生活や進路に影響が出ていない
- 親が子どもに過度な負担をかけないよう配慮している
【ヤングケアラーの疑いがある場合】
- 親が仕事で不在の時間帯、子どもが一人で排泄介助や入浴介助をしている
- 夜間に祖父母の様子を見守るため、睡眠時間が削られている
- 介護の責任を感じ、学校を休んだり、進学を諦めたりしている
- 精神的なストレスで体調を崩している
判断のチェックポイント
以下の項目に複数当てはまる場合、ヤングケアラーの可能性があります。
- □ 子どもが「やめたい」と言えない状況にある
- □ ケアの時間が1日2時間以上、ほぼ毎日続いている
- □ 学校の遅刻・欠席が増えている
- □ 友人との交流が減り、孤立している
- □ 宿題や勉強に集中できていない
- □ 疲れた表情をしている、体調不良が続いている
- □ 部活動や習い事を諦めている
- □ 保護者が子どもの負担を把握していない、または無関心



具体例を見ると、「頻度」と「子どもの意思」が大きなポイントだとわかりますね。



たまに手伝うのと、毎日責任を負うのとでは、心身への影響がまったく違うのだと思いますね。
ヤングケアラーに気づいたらどうする?相談先と支援


もし、自分の子どもや周囲の子どもがヤングケアラーかもしれないと感じたら、どうすれば良いのでしょうか。
家庭でできること
①子どもの声を聞く
まずは、子ども自身がどう感じているかを聞いてみましょう。
- 「最近疲れていない?」
- 「やりたいことを我慢していない?」
- 「手伝ってくれて助かっているけど、無理していない?」
子どもが「大丈夫」と言っても、表情や様子に変化がないか注意深く見守ることが大切です。
②負担を減らす工夫
家事や介護の一部を外部サービス(ホームヘルパー、訪問介護、家事代行、ファミリーサポートなど)に頼ることも検討しましょう。
自治体によっては、ヤングケアラー支援として、家事支援や学習支援を提供している場合もあります。
③「断れる」環境をつくる
子どもが「今日はできない」と言えるよう、他の選択肢を用意しておくことが重要です。
相談窓口
ヤングケアラーについて相談できる窓口は、全国に広がっています。
【こども家庭庁ヤングケアラー相談窓口】
- 公式サイト:https://kodomoshien.cfa.go.jp/young-carer/
- 各都道府県の相談窓口情報を掲載
お住まいの自治体のホームページで「ヤングケアラー 相談」と検索すると、窓口情報が見つかります。
【その他の相談先】
- 子どもの人権110番:0120-007-110(全国共通・無料、平日8:30〜17:15)
- 児童相談所全国共通ダイヤル:189(いちはやく)→お住いの地域の児童相談所につながります。
学校や周囲の大人ができること
教育関係者や医療・福祉関係者など、子どもと接する機会のある大人は、以下のような「気づきのサイン」に注意を払うことが求められます。
- 遅刻や欠席が増えた
- 提出物が出せない、忘れ物が多い
- 疲れた様子で居眠りをしている
- 友人との交流が減った
- 家庭のことを話したがらない
気になることがあれば、まずは声をかけ、話を聞くことが第一歩です。



ヤングケアラー専門の相談窓口があるのは心強いですね。



一人で抱え込まず、まずは相談してみることが、状況を変える第一歩になると思います。
まとめ
具体的には、以下の3つの観点で判断できます。
- 状況の違い:子どもらしい生活ができているか
- 頻度・時間の違い:負担が大きすぎないか
- 責任の度合いの違い:子どもが「断れる」かどうか
また、ヤングケアラーとネグレクトは別の問題です。
多くのヤングケアラーの家庭では、保護者も精一杯努力しています。
ただし、一部のケースではネグレクトや虐待に該当する場合もあるため、慎重な見極めが必要です。
「うちの子は大丈夫だろうか」「どこに相談すればいいのかわからない」と感じたら、まずはお住まいの自治体の相談窓口やこども家庭庁のヤングケアラー相談窓口に連絡してみてください。
一人で抱え込まず、周囲の力を借りながら、子どもが子どもらしく成長できる環境を整えていきましょう。
