阿部暁子さんの小説「カフネ」が2025年の本屋大賞を受賞しましたね。
この記事では、阿部暁子のカフネのあらすじを徹底解説します。
ネタバレには注意!
物語の核心に迫りながら、キャラクターの魅力や物語の展開を明らかにし
「カフネ」という作品の魅力を余すことなくお伝えしていきますね。
作品をこれから読む方も、すでに読んでいる方も、新たな視点で楽しめること間違いなしです!
著者・阿部暁子について

著者の阿部暁子(あべ・あきこ)さんは岩手県出身・在住の作家です。
2008年に『屋上ボーイズ』(応募時タイトルは「いつまでも」)で第17回ロマン大賞を受賞しデビューしました。
他の著書に『どこよりも遠い場所にいる君へ』『また君と出会う未来のために』『パラ・スター〈Side 百花〉』
『パラ・スター〈Side 宝良〉』『金環日蝕』『カラフル』などがあります。
阿部暁子の小説カフネのあらすじを徹底解説!

「カフネ」の物語は、法務局に勤める41歳の野宮薫子が主人公です。
薫子は、溺愛していた弟・春彦が原因不明の急死を遂げたことで深い悲しみに沈んでいました。
それに加えて、不妊治療と流産が原因で夫との離婚も経験し、アルコールに依存する日々を送っていました。

41歳で弟の死、離婚、アルコール依存…って、野宮薫子さん、過酷すぎ
そんなある日、薫子は弟が遺した遺言書から、弟の元恋人・小野寺せつなと会うことになります。
せつなは家事代行サービス会社「カフネ」に勤めており、やがて薫子も「カフネ」の活動を手伝うことになります。



弟さんの元恋人との関係も気になるところです。何か過去があるのかな?



「カフネ」と出会ってどう変わっていくのか、すごく気になりますね。
「カフネ」では、家事に追われる忙しい人々の家庭を訪問し、掃除や料理を提供します。
プロの料理人でもあるせつなと掃除が得意な薫子がペアとなって訪れる家庭は、さまざまな問題を抱えています。
一人親家庭、育児に疲れた母親、介護に疲弊した女性など、生きることに疲れた人々に対して
彼女たちは心のこもったサービスを提供していきます。



「カフネ」が支えるのは、ただ家事に追われている人だけじゃないんですね。



一人親家庭、育児疲れ、介護疲れ… みんなそれぞれ抱えているものが大きくて、きっと「カフネ」の訪問を待っている人たちがいるんだろうなと感じます。
弟を亡くした薫子と弟の元恋人せつな。
最初は距離を置いていた二人ですが、「食べること」を通じて少しずつ心の距離が縮まっていきます。
物語の後半では、春彦の死の真相やせつなの抱える心の痛みも明らかになり、互いの傷を癒していく姿が描かれます。



弟の死という悲しい過去を持つ薫子と元恋人・せつな。簡単に近づける間柄ではないのに・・・・



「食べること」が二人の距離を縮めていくっていうのが、なんだか温かくて希望を感じますね。



でも後半は、春彦の死の真相や、せつなの心の傷も明らかになるんですね…。
「カフネ」とはポルトガル語で「愛する人の髪にそっと指を通す仕草」を意味する言葉です。
この優しさに満ちた物語は、大切な人を失った悲しみを抱えながらも、新たな絆を見つけ、再び生きる力を取り戻していく人々の姿を描いています。
「カフネ」が描く食と人生の関係性
「カフネ」の物語の中心にあるのは「食」と「人生」の関係性です。
料理人でもあるせつなが作る料理は、単なる栄養補給以上の意味を持ちます。
彼女の料理は、食べる人の心と体を癒し、生きる力を与えるものとして描かれています。
特に印象的なのは、せつなが作る「卵味噌」。
この郷土料理を通じて、故郷や家族とのつながりが感じられる場面は読者の心に深く響きます。また、物語の中でせつなは訪問する家庭それぞれの状況に合わせて最適な料理を提供していきます。
「あなたが快適に生きるためには、いま、何を食べるべきなのだろう?」
—この問いかけが物語全体に通底しています。
食べることは生きることに直結し、きちんと食べることが人生をきちんと生きることにつながるという哲学が示されています。
阿部暁子のカフネが伝えたいメッセージと感想


「カフネ」には、いくつかの重要なメッセージが込められています。
1. 「頼る」ことは弱さではない
「カフネ」が伝えるメッセージは、現代社会において非常に重要だと感じます。第一に、「頼る」ことが決して弱さではなく、むしろ人間関係を深めるための大切なステップであることを教えてくれています。薫子の変化を通じて、私たちも時には他の人に頼ることの価値を見直すことができると感じます。
2. 喪失から立ち直る力
大切な人を失った悲しみは簡単には癒えないものですが、新たな絆を築くことで少しずつ前に進んでいく力が生まれることを物語は教えてくれます。薫子とせつな、そして「カフネ」の利用者たちは皆、何かを失った経験を持ちながらも、互いに支え合うことで、前に進むための希望を与えてくれます。
3. 食の持つ癒しの力
「食」の持つ癒しの力が、人と人との距離を縮める大きな役割を果たすことを描いている点に心を打たれました。食事を共にすることで生まれる心のぬくもりやつながりが、何よりも人を元気づけるというメッセージが心に残ります。
阿部暁子のカフネの登場人物たちの魅力


「カフネ」に登場する主要キャラクターには、それぞれ独自の魅力と背景があります。
野宮薫子(のみや かおるこ)
法務局に勤める41歳の女性。努力家で真面目な性格ですが、他人を頼ることが苦手で、情に厚い一面も持っています。溺愛していた弟・春彦の突然の死と、不妊治療と流産を経て夫との離婚を経験したことで、深い悲しみと喪失感に苦しんでいました。物語の中で、少しずつ自分の感情と向き合い、他者とのつながりを取り戻していきます。
小野寺せつな
薫子の弟・春彦の元恋人で、家事代行サービス会社「カフネ」に勤めています。プロの料理人としての腕前を持ち、サービス精神旺盛ですが、冷徹で可愛げがない一面も見せます。しかし、その奥には誰にもSOSを出せず、出さずに生きてきた複雑な過去と心の痛みを抱えています。
野宮春彦(のみや はるひこ)
薫子の弟で、製薬会社の研究職に就いていました。しっかり者で明るい性格の持ち主でしたが、物語の冒頭では既に亡くなっています。物語が進むにつれて明らかになる彼の人生と死の真相が、薫子とせつなの関係に大きな影響を与えます。
滝田公隆(たきた きみたか)
薫子の元夫で弁護士。空気を読むのが上手く、細やかな気遣いができる人物です。春彦とも仲が良かったという背景があります。
常磐斗季子(ときわ ときこ)
家事代行サービス会社「カフネ」の代表。落ち着いていて包容力がある女性として描かれています。
阿部暁子のカフネの評価


・「カフネ」は2024年5月に講談社から発売され、2025年の本屋大賞に輝きました。また「第8回未来屋小説大賞」「第1回『あの本、読みました?』大賞」も受賞しています。
・書評家の三宅香帆氏は「これは私たちに息苦しくなく生きる選択肢を、食べることを通して、そっと示してくれる物語なのだ。」と評価しています。
・エッセイストのマライ・メントライン氏は「読む者を深みにいざないつつ思考させてくれる、実に秀逸な小説だ。」と称賛しています。
・朝日新聞の書評では「雨に濡れた人への、傘のような一冊だ。」と評されるなど、多くの読者や専門家から高い評価を受けた作品です。
まとめ
「カフネ」は、悲しみと喪失を経験した人々が、食べることや他者とのつながりを通じて少しずつ立ち直っていく姿を描いた心温まる物語です。
2025年本屋大賞受賞作として多くの読者に愛された「カフネ」は、これからも多くの人の心に寄り添い、生きる力を与え続ける一冊となることでしょう。
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